心理的要因が起こす腰痛
一般に、発症から3か月以上続く腰痛を慢性腰痛と呼びます。慢性腰痛を起こす要因には、骨や筋肉に異常がある「器質的要因」、家庭か職場などの「環境的要因」、うつや不安などの「心理的要因」があります。腰痛の原因がはっきりせず、保存的治療(保存療法)を受けても痛みが長引く場合には、心理的要因の中でもストレスが関係している可能性が考えられます。精神的なストレスが強いと、痛みを抑える脳内物質が放出されにくくなったり、楽しいときには痛みを忘れるような仕組みが、うまく働かなくなったりします。
認知行動療法
近年、ストレスが原因の腰痛には、うつ病などの精神療法として行われてきた認知行動療法という治療が有効であることがわかってきました。痛みも含めて、マイナス思考に陥っている原因を1つずつ解決したり、回避する方策を見つけたりして、前向きな気持ちになってもらうことが目的です。
まず、患者さんの状態を問診やアンケートから評価し、治療方針が決められます。治療の内容は、患者さんの状態や生活環境などに応じて変わり、薬物療法や運動療法、心理面のケア、生活のアドバイスなど、多面的に行われます。そのため整形外科を中心に、神経精神科、リハビリテーション科、麻酔科など複数の診療科の医師や理学療法士、看護師などとも連携して治療に当たります。
痛みの悪循環を断ち切る
慢性腰痛の治療で使われる薬には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、抗うつ薬、抗てんかん薬、オピオイド(医療用麻薬)などがあります。抗うつ薬は、うつ状態に対する効果のほか痛みを抑える効果もあります。抗てんかん薬は神経過敏を抑える薬で神経由来の痛みに有効です。オピオイドは非常に強い痛みや難治性の痛みに使われます。担当医の指導に従って正しく使用してください。
認知行動療法が行える医療機関は少ないのが現状です。もし、長引く腰痛がストレスに関係していると思った場合は、「痛みがあるから何もできない」「何もできないからさらにストレスがたまる」という悪循環を自分で断ち切るようにしましょう。そのうえで、ウオーキングなどの運動をしたり、趣味や外出をしたりと、できることから行動を起こし、ストレスの軽減をはかりましょう。